俺がレビュー等で「旋回極振り」という表現をする理由がわかっていただけるかと思います。
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 スロットル、ピッチ、ヨー、ロール。ラダー、エルロン、エレベーター。欧米のレビューとかでも結構耳にしますし、大抵のドローン操縦How To 本(?)でも出て来る言葉です。これは、「空を飛ぶ元祖が飛行機」であるところから来ています。

 飛行機は、翼の形によって空気の流れ、風を「揚力」に変換して飛んで居ます。翼の下側に遅い風、翼の上側に速い風の流れを作りだせば揚力が得られます。
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 飛行機は風の流れを、翼の形を変形させる事でコントロールし、機体の向きを変えさせたり、上昇したり下降したりします。

  • スロットル:プロペラやジェットなどの推力。車で言えばアクセルの役割。
  • ラダー:機首を振る動翼。語源は船の「舵」だそうです。
  • エルロン:機体を横転させるための補助翼。
  • エレベーター:昇降舵。機首を上げ下げするための水平尾翼の動翼。
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 飛行機のシミュレーターゲームなどでわかると思いますが、上昇したかったら「エレベーターアップ」という、操縦桿を手前に下げる動作をします。プロポに置き換えると「レバーを下に倒したら上昇する」という事に。ほーら、どんどんややこしくなったw

 飛行機で上昇したかったら、
1.スロットルを上げて加速し推力を得る。
2.エレベーターを引いて空気の流れを揚力に変える。

 曲がりたかったら、
1.スロットルを上げて加速し推力を得る。
2.ラダーで機首を振りつつ、エルロンで機体を傾けて墜落しないようにバランスをとる。
 という複雑テクニックを要します(実はシレっとシンクロしてたりw)。

 
 なにせプロポは飛行機もヘリコプターもドローンも共通というか、
 飛行機のプロポをドローンが流用させてもらっている
んですよ。

 だからややこしい事になっています。

 飛行機はまさに航空力学を肌で覚えていないと、まともには飛ばせそうにないですね。飛行機は。

 続きまして、ヘリコプター。メインローターとテールローターの、2つのプロペラで飛びます。メインローターが揚力の役割を果たしているのは、誰もが想像できる事でしょう。しかしどうして前後移動や左右移動を行っているのか、ちょっとピンと来ないですよね。
 これには「反トルク」が利用されています。
 例えば、電気ドリルで板に穴をあける際、力加減が弱いと自分が回ってしまいます。板を手で押さえておかないと板が回ります。
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 回転するものは、その回転の逆方向にも力が働く
これが反トルクです。

 ヘリコプターはメインローターを回転させて揚力を得ています。メインローターは電気ドリルの如く空気中に穴を開けて突き進もうとする事で揚力とし、同時に反トルクによって機体は逆方向に回転しようとしてしまいます。これを押さえこむ「手」の役割をするのがテールローターです。
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 さらにテールローターにも反トルクが生じます。で、それを抑え込むのがメインローターと。ヘリコプターはこの2つの微妙な回転バランスによって静止しています。

 で、ここから訂正して再勉強して解説です。

 ヘリの場合の前後左右移動は、なんとブレード角度を回転するタイミングに合わせて変える事で、揚力の大小を生み出しているそうです(このブレード角度を「ピッチ」と表現するそうですが、それやっちゃうとごっちゃになりそうなので「ブレード角度」で行きます。)。
 ブレード角度がゆるいと揚力は下がり、きついと揚力はあがります。
 で、前進したい場合は機体の前の揚力が下がるよう、機体の後ろの揚力はあがるように、回転しながらもタイミングを合わせ、ブレード角度を変えているそうです。
 このように、回転し続けながらも機体のそれぞれの位置でそれぞれ微細にブレード角を調整する事を「サイクリックピッチコントロール」と呼ぶそうです。

 で、単純に考えれば、機体の前にブレードが来た時にブレード角度をゆるめ、機体の後ろ側にブレードが来た時にブレード角度をきつくすれば、機体前部の揚力は下がり、機体後部の揚力はあがり、前進するんだろうと思ったんですが、そうじゃないんですね><

 回転する物体に加えられた力は、90度ずれて効果を出す

 これを「ジャイロスコピック・プリセッション」(単に「ジャイロ効果」と表現されたものも。これも誤解されそうなのでジャイロスコピックプリセッションでいきます。)と呼んでいると。
 ジャイロスコピックプリセッションは、地球ゴマで解説しているサイトがありました。しかもブーメランの飛行理論…。なるほどわからんw

 メインローターが時計回りで回っている場合ですと、機体の前部で揚力を下げるために、機体の左でブレード角度をゆるめ、機体の後部で揚力を上げるために、機体の右でブレード角度をきつめる。

 ヘリコプター考えた人、アタマいいわ…w

 ※今回ヘリの飛行について指摘された中で、メインローターを移動したい方向に傾けて移動しているという話もありましたが、俺は見つけられませんでしたが、そういう簡単な方法も今ではあるのかも知れません。

 ドローンは、あえて言い換えるならマルチコプターは、揚力のコントロールをヘリコプターの様にブレードの角度を変化させるのではなく、単純に4方向などに配列したプロペラの回転数調整によって効率よく飛ぶ事を目的としたものです。

 時計回り(ClockWise)、反時計回り(CounterClockWise)のローターを交互に配置することで、お互いの反トルクを相殺すれば静止します。
 左移動したければ、右側2つのローターの回転数を上げれば、機体が左へ傾き左へ移動します。
 左旋回したければ、右前と左後ろのローターの回転数を上げれば、反トルクのバランスが変わって反時計回りが勝ち、左旋回します。

 機体の姿勢制御する方法が4つのローターの回転数調整だけで済むのが、マルチコプターの利点ですかね。

 ここまで来て全く残り3つの言葉「ピッチ、ヨー、ロール」の説明をしていないわけですがw

 よくトイクアの性能表記に「6軸ジャイロセンサー搭載」なんてものがあります。厳密に言えば、3軸センサーにそれぞれの軸の加速度もわかるセンサーなんですけどね。
 3軸センサーはX軸に1cm動いた、んで、6軸センサーはX軸に時速1kmで1cm動いた、みたいな。

 空間座標はX、Y、Zで表現されることが多いですが、飛行機の場合は座標ではなくベクトル?モーメント?回転軸的表現が適用されます。そりゃそうだ。飛行機は空中に静止する物体ではなく、常に空中を移動しつづける物体ですから。
  •  ピッチは、エレベーター操作による昇降舵で変化する軸
  •  ヨーは、ラダー操作による方向舵で変化する軸
  •  ロールは、エルロン操作による補助翼で変化する軸
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 基本前進ありきで、ピッチ、ヨー、ロールがゼロ(変化なし)なら真っ直ぐ前進飛行。
 ピッチがあがると機首が上を向いて上昇。
 ヨーがあがる(左)と機首が左を向いて左旋回。
 ロールが上がる(左)と胴が左回転。

 あーくそややこしい!w

 ドローンを飛ばす上で、雑学的に知ってて損はないのでしょうけど、知ったところでどうよってのはありますね。飛行機の場合は、「エレベーターを操作してピッチをあげ、機首を上に向けて上昇させる」という結果までの流れ動作を理解する必要があると思いますが、ドローンでは「上昇させたいならレバーを上へ」 で済む話なんです。操縦方法も機体のベクトル動作をレバー動作に連動させているわけですが、今のところコレが最も直感的だからとされているからで、そのレバー動作を具現しているのが、飛行機用・ヘリ用プロポであって。飛行機でいうスロットルは前進ですが、ドローンでいうスロットルは上昇ですし(ヘリコプターもかな?)。

 自分の場合、あえてヨーだピッチだは使わず、右移動とか左旋回とか、日本語で分かりやすいと思われる言葉を多用しています。おかげで自分自身も、プロポのセッティングとかで「あれ?PITCHって前進後退だっけ?」みたいなややこしくて混乱して困ってしまう事態に陥る事しばしば。

 トイクアではレバーを使わず、スマホのジャイロセンサーと、トイクアのジャイロセンサーを連動させて飛ばすタイプも出てますね。飛行機やレーサードローンの様に常に前進させる飛ばし方ではない、どちらかというと「空中静止ありき」な操縦方法であれば、スマホのジャイロコントロールによる飛ばし方の方が、より直感的なのかもなと思ったりしています。
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 レバータイプにしたって、最近ではゲームコントローラーを意識したものも。中にはまんまプレステと同じものもありますよねw そう言えばゲームでキャラクターを操作するのに、「速く移動するには方向レバーを2回倒す」なんてのがありましたが、ひょっとしたらこれからの人は「あれ?方向レバー2回倒したのにスピードアップしないジャン!」なんて人も出てくるかも知れませんね。